"Thirty-six views of Mt. Fuji/Ushibori in Hitachi Province" "Hokusai Katsusika"
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常州とは常陸国(ひたちのくに)の事で、常州牛堀とは現在の茨城県潮来市牛堀の事です。 当時、この辺りは霞ヶ浦の出入口として水上交通の要衝であり、苫舟と呼ばれる船底の浅い舟がたくさん行き来していました。
苫舟とは苫(茅)で屋根を葺いた小屋を持つ舟のことで、この舟の船頭の家族は船上生活をする場合が多かったのです。
これは、その船頭一家の一日が始まる早朝の情景を描いた作品です。
今日ではほとんどみられなくなった羽釜(米を炊く釜)で米をとぎ、とぎ汁を捨てる。この朝食の準備の光景は昭和の前半まで(つまり羽釜でご飯を炊かなくなるまで)はどこの家庭にも見られ、一日の始まりを象徴的に表すものてあったと言えます。
米の入った釜ごと水中に落としたら大変なので、非力な女房には(我が家は違いますが・・・笑)任せられない、と亭主の船頭が米をといでいる。あの時代の人々が朝早くから時間を惜しんで働く、健全な暮らしの姿がこの絵には感じられます。
米のとぎ汁を流す僅かな水音に驚いてつがいの白鷺が飛び立つ。船頭の家族の一日の始まりと同じくして白鷺にも一日が始まる。その始まりの合図は米のとぎ汁を捨てる小さな水音なのである。
何と静かで、珍しくもない日常的な朝がこれほどドラマティックに描かれていることでしょうか。藍摺りの青色が過不足無く早朝の静けさを表して見事ですね。
この絵も構図に触れざるを得ません。右下から左上の対角に向けて、絵のど真ん中に苫舟を斜めに据えている。
そして手前に描かれた湖岸若しくは小山とそこに生える灌木は、遠近法から考えるともう少し大きく描かれるのが自然なバランスではないかと思えるのだが、北斎は作為的に小さくしたのではないか。
その作為によって苫舟が絵から大きくせり出して来て、まさに主題たる「常習牛堀」の船上生活者の静かな朝の始まりを語っているように感じます。
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