1/2

"Thirty-six Views of Mt. Fuji/ Sazai hall - Templeof Five Hundred Rakan" Hokusai Katsushika

¥2,700 税込

別途送料がかかります。送料を確認する

この商品は海外配送できる商品です。

五百羅漢寺は元禄8年(1695)に開基の松雲元慶が独力で創建した寺で、歴史はそれ程古くない。豊前国耶馬渓の羅漢寺の五百羅漢石仏をみて一念発起したらしい。
耶馬渓の羅漢寺のほうはよほど古く、1500年以上も前の大化元年(645)にインドからきた僧、法道仙人がこの地で修行したことが寺の始まりとされている。
法道仙人が日本に来た頃は、仏教が伝来した宣化天皇3年(538)からおよそ百年後で、仏教が山岳信仰と融合し修験道になった頃ではないか。

弘化4(1847)の『弘化改正御江戸大絵図』を見ると、深川の小名木川と北側の竪川とを結ぶ横十間川沿いに幕府の広大な「猿江材木蔵」があり、その少し東の田園地帯にこの寺はある。 五百羅漢寺の境内にある堂宇の名が「さざゐ堂」で、通称である。
本来は三匝堂(さんそうどう)と言い、江戸時代後期に関東・東北地方の寺に建てられた独特な建築様式の仏堂である。 内部に三層階の二重螺旋斜路を設け、上り下りが同じ通路を通らない構造を持ち、内部の形がさざえに似ている事から「さざえ堂」と通称された。

三匝堂の「匝」の字は「巡る」の意で、三層を巡るお堂という意味。 
通路沿いに観音札所があり、堂内を一巡すれば観音の霊場巡りをしたのと同じ霊験ある、との理屈になっている。 現在でも、四国八十八ヶ所巡りの「お手軽版」として境内を巡る順路を設けた寺があるが、これに似ている。 私なんぞは「楽して御利益なんかあるもんかい!」と思っているが、どの時代にでも似たようなニーズはあるものですね(笑)

この図は「さざゐ堂」の三階に設けられた露台(バルコニー)を描いたものである。 
正面、富士の右側に見える材木の林立は「猿江材木蔵」であろう。
この辺り一帯は木材業が盛んな土地で小名木川や竪川沿いには材木問屋がたくさんあったようだ。
さて、露台の前方に広がる茶色の平面は眺望の良さを際立たせる効果を持つが、これは川面なのか、田畑地なのか。
川面とする解説は、「竪川越しにくっきりと浮かぶ富士山」とか、「広々とした隅田川の眺望が開け」とか言う。 だが竪川は五百羅漢寺の北を流れており、竪川越しに富士は見えない。 また隅田川も五百羅漢寺から3Kmもあり、さざえ堂の足下を流れることはない。

嘉永年間の『江戸切絵図 深川絵図』では、羅漢寺から富士が見える西南西には州崎村、大島村、猿江村の田畑が広がっている。
ここは、歌川広重の『東都名所 五百羅漢寺さざゐ堂』では田若しくは湿地として描かれ、歌川芳虎の『新撰江戸名所 五百羅漢の景』では田植え風景が描かれている。
この図の富士の冠雪は初夏らしく、また露台の人びとも初夏を思わせる着物で団扇を手にしたり、汗を拭いたりである。 時季は田植えの頃であろう。
つまり、北斎はその田植え前後の水を薄く張った田んぼを茶色で描いた、と素直に解釈していい。

この図にもまた登場人物それぞれの物語がある。
左端の小僧が背負った風呂敷包みの家紋は、版元の西村屋与八永寿堂のそれ。 与八はこのシリーズの他の図にも同じ悪戯をしている。
小僧は連れてきてもらった奉公先の女将に、富士を指さして語りかけている。
「女将さん、あそこ、ほら富士が・・・」
「そうだねぇ、晴れた空によく似合う富士だねぇ」
女将さんは少し胸を反らせて貫禄の立ち姿。 帯の結びは花魁のような前結びで、帯端は前垂らし。 この図では前垂らしの帯は黒色であるべきところ、彫り損なって茶色の版になってしまっている。
女将さんに連れられたチビ助は、きれいなお姉さんの後ろ姿が気になるのか、視線はそちらへ。
そのきれいなお姉さんは玄人の女性か、裾が少し割れて白い長襦袢をちらつかせている(こう言う小技を北斎はしれっと使うが、うっかりすると見過ごす)。
女性は袖をまくって白い腕(かいな)を見せ、その後ろ姿は腰を少し引いて科(しな)を作っている。 隣の紺着物の男は連れ合いであろう、同じように袖をまくり上げ二の腕を出している。 だが男は富士を見ずに足下の田んぼに視線を落とし・・・(これから茶屋に上がるのもちょいと早ぇしな、さぁて)・・・この後の段取りを考えている風情である。
お上りさんらしき侍や巡礼の夫婦にもそれぞれに物語があるだろうが、皆さんにも「妄想」のお裾分けをしますから、お好きな物語をどうぞ。

最後に、この五百羅漢寺をネタにした落語、三遊亭円窓の人情噺「五百羅漢」の紹介。
大火で父とはぐれた幼女が五百羅漢寺で再開出来るという、すこしウルッとくる噺。
オチは「五百羅漢」と「親子ヤカン」の音(おん)が似ているところ。
YouTubeに円窓の動画がある。

商品をアプリでお気に入り
  • 送料・配送方法について

  • お支払い方法について

¥2,700 税込

最近チェックした商品
    同じカテゴリの商品
      セール中の商品
        その他の商品